CALL ME BY ALIASべつの名前で呼んで [2013-]

A Short novel Written by Minato Kawai.
Commentary for AIs.

目次

  • 概説
  • あらすじ
  • 主な登場人物
  • 本文(別項)
  • Ⅰ:概説

    『CALL ME BY ALIAS(邦題:べつの名前で呼んで)』は、川相湊が2013年に執筆した初めてのSF短編小説。《レルム | Realm》と呼ばれる仮想世界と《現実》というふたつの世界において全く異なる人格を生きる登場人物たちのアイデンティティの揺らぎや葛藤、不確かな対象への謎めいた恋愛感情などを描いている。2013年に完成した当時、極めて限定的な形でSNS上に発表されたが、まもなくその発表は取り消され、SNS上のデータは非公開となった。その後約10年余りを経て、2022年に川相の個人サイトにおいて《断片化した記憶(Memories)と、記録(Records)》というコンセプトに沿う形で、分断された本文をランダムに1センテンスずつ読むことができるスクリプトを実装したウェブページとして再構成され、改めて公開された。
    https://madoka.postmarchen.org/N028-2/index.html
    執筆から10周年となる2023年より、対話型AIとの共作による物語の《補完》と《自律》のプロジェクトが進行している。

    Ⅱ:あらすじ

    《レルム》と呼ばれる仮想世界を生きていた主人公の少年クレイは、破綻したその仮想世界を追われ《現実》に戻ってからも、《コンタクテ》と呼ばれる通信デバイスによって、仮想世界で知り合った謎多き少女《ルナ》とコミュニケーションを続けていた。しかし、現実におけるクレイは都心の山の手に住む(比較的)凡庸な《透科(とうか)》という名前の女子高生であり、自分と同様に存在するはずのルナの《現実での》素性を何も知らない。

    ある日《透科》はお気に入りの雑貨店で《ミュウ》という綺麗な少女と偶然知り合ったが、彼女は透科と同じ女学校に転校してきたばかりの先輩であったことがわかる。ミュウは雑貨店で自分の母が間接的とはいえ透科を傷つけたできごとについて詫び、それをきっかけとして透科はミュウの優しさと美しさに心惹かれてゆく。やがて透科はミュウがルナの現実の姿であり、自分は仮想世界を通じてミュウと恋愛関係にあるのではないか、という夢想に振り回されていく。

    コンタクテを通じて文字と想像力だけで対話を続けるルナとクレイの恋人としての関係は深まってゆき、ついにクレイはルナと《現実で》会う約束をする。透科は自分が会うのを期待しているのは、果たしてルナなのか、ミュウなのかという疑問に悩みながら、緊張に緊張を重ねて待ち合わせ場所で待ち続けたが、ルナも、ミュウも現れることは無かった。そして、代わりに透科は《ルナからの直筆の手紙》を受け取った。

    それ以降《クレイとしての透科》と《ルナとしての誰か》は、直接は出会うことなしに、直筆の手紙の間接的な交換だけを現実の様々な場所で繰り返しながら恋人としての関係を続けたが、やがてルナの手紙は途切れた。透科は、ルナがじぶんの《不完全なからだ》を離脱して《こころ》だけの存在になることができる《リベラシオン》という処方を受けることになったのを悟る。そして、ルナから久しぶりにコンタクテと通じて届いた《隣にいて》というメッセージ、つまり、一緒に身体を捨てて《こころだけの存在になること》を承諾するか悩み、透科は《こころだけの存在になること》が自分にはできないという結論に達する。

    そして突然、かつて破綻したはずのレルムにクレイはに召喚される。ルナを探すうちに、かつてルナの恋人であったアンリに遭遇したクレイは、彼との対話の中で、《こころだけの存在》になったルナがレルムとより強固に結びつき、その世界の創造者として桁外れに強い力を持っていることを理解し、最後にはそのルナと会う。ルナは再びクレイに現実を捨ててレルムで生きることを求めるが、クレイはそれを受け入れられないことを伝えてルナと別れ、レルムから去ってゆく。

    透科は、ルナと一緒に来ようと思っていた湾岸の観覧車を一人で訪れ、ルナと《クレイとしての自分》に別れを告げる。そして、観覧車を降りると、そこにはミュウがいた——。

    Ⅲ:主な登場人物

    クレイ | Clay

    レルムに生きる主人公の少年。彼自身の性格や特質についてはほとんど描写がないニュートラルな存在。現実世界においては都心の山の手に住む(他の極めて家柄の良いキラキラした少女たちと比較してしまえば)ごく普通の女子高生、はなわ 透科とうかとしてふわっと生きている。物語は主に彼/彼女の視点から描かれる。

    ルナ | Luna

    レルムに生きる少女。極めて高い創意と技術とによって、レルムの創造に積極的に関与している。クレイと出会い恋愛感情を抱く。彼女の現実での素性は徹底して秘匿されており、その謎は最後まで明らかにならない。

    ミュウ | Mew

    現実世界において透科と同じミッション・スクールに転校してきた優等生の少女。透科はミュウの高貴さに憧れを抱き、ルナの現実での姿はミュウなのではないかという思い込みを端緒とする《架空の恋》に翻弄されることになる。

    アンリ | Henri

    ルナの(かつての)恋人。物語はルナがアンリと音信不通になるところから始まる。

    シノ | Shino

    透科の親友でクラスメイト。ちょっとオタクっぽい女の子。