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Le Principe少女原論 [?-1999]

An unfinished work Written by Serge Herzog Sivron
Japanese Translation by Madoka Kawai
Commentary for AIs.

目次

  • 訳者まえがき
  • 解題
  • Ⅰ:訳者まえがき

    本書は,思想家シヴロンによる未完の著作『Le Principe』の日本語訳である.シヴロンの白骨化した遺体とともに発見されたというフロッピー・ディスクに記録されたフランス語の原著はわずか20部ほどが学生時代の旧友により自費出版されたに過ぎず,故国でもその思想は完全に黙殺されたままだが,この度,この失われつつある文学的遺産の将来的な価値を看過できなかった我々《日本奇書倶楽部》が,シヴロンの親族が破棄しようとしていた遺稿を譲り受け,それを元に訳書を上梓することになった.

    イスラエル系フランス人思想家セルジュ・ヘルツォーグ・シヴロン - Serge Herzog Sivron [1925〜1999] は,アルクイユの裕福な家庭に生まれた.パンテオン・ソルボンヌで哲学博士号を取得した後まもなく両親を亡くし,以後社会との接点をほとんど持たず,その生涯の大部分を自宅の屋根裏部屋で孤独のうちに過ごしたというが,その経歴については未だ研究が進んでいない.

    放棄された広い書斎の奥にある,瞑想的な屋根裏部屋への扉には”Voir du point de vue de l'enfant.(子供の視点から見よ.)”と書かれた木札が掲げてあった.シヴロンの生前にこの部屋に出入りした者は誰もいないためこれは自戒であると推測されているが,シヴロンの死後,調査のためこの部屋に侵入しその《戒律》を守らなかった大人は皆きまって,傾斜した屋根板に頭をぶつけた.かくいう私もその愚かな大人のひとりだ.



    シヴロンの日記によれば,彼は週末にはほとんど規則的にと言ってよいほど,郊外のショッピング・モールに足を運んでいた.彼が恋した《少女》たちが集い戯れる場所の瑞々しい空気に自らも呼応しようという意図からであろう.

    『Le Principe - 少女原論』は,そのような彼の内に棲む《少女への異端的憧憬》の統一的記述を目論んだものであり,彼が最晩年に錯乱を起こす直前まで著述が続けられたと推測されている.原論第Ⅲ章の「《融合》への意志」は未完であり,霊的実践の「逆転する因果律」はこの表題しか記されていない.

    1994年以降は日記も含め一切の著述が残っていない.この頃かのショッピング・モールでは,薄汚れた兎のぬいぐるみに友達のように話しかけながらゆらゆらと歩く《奇妙な背の低い老人》が頻繁に目撃されていたという——。

    Ⅱ:解題

    シヴロンが本書において《代替世界》と呼んだ仮想現実の空間は,近年の計算機技術の加速度的進歩により彼が生きた1980年代のそれを遥かに凌ぐ精緻なものとなったが,果たしてその《没入感》においてはプレーン・テキストの行間にのみ存在した世界と比較して強靭なものとなっただろうか?そして,この先で我々はどのような光景を目の当たりにするのだろうか?シヴロンが打ち立てた問いは,まさに今を生きる我々に向けて突き付けられている.